Euphorbia tortirama R.A.Dyer
原産国:南アフリカ共和国(Northern Provinces)

Euphorbia tortirama は矮性の多肉植物で、地下茎から捻れた枝を伸ばします。地下茎は最大で長さ30cm、太さ15cmにまで達します。地下茎から20〜50本程の枝を出し、その枝はコルクスクリュー状に捻れます。この特徴が「tortirama(捻れた枝)」名前の由来です。
年数を経るごとにコルクスクリュー状の外観は強調され、Transvaal(トランスヴァール)で最も魅力的なユーフォルビアのひとつとされることもあります。

主茎部からコルクスクリュー状の枝を多数出す。
E. tortirama は、1935年と1936年にA. E. Soll氏とS. W. Smith軍曹によってトランスヴァールのBandolierskop(バンドリアーズコップ)で採集された標本に基づき、1937年にR.A.Dyerによって記載されています。それ以前の1929年にPole Evans博士により採集された植物もE. tortirama とみられており、おそらく、これが本種の最初の採集記録です。
分布
Bandolierskop、Pietersburg(現Polokwane)、Ellisras(現Lephalale)の西、ボツワナ国境付近にあり、樹木や低木の間の石の多い平地に自生しています。場所によっては一般的にみられる種ですが、多くの場合、生息地の劣化や都市開発により数を減らしています。
1941年に刊行されたThe Succulent Euphorbieae (Southern Africa).の中の一文には、「Potgietersrust(現Mokopane)地区の一部ではかなり一般的であり、ある者はRiebeeck Wes付近で、この植物の野原を見た」とあります。現在も同様の自生環境が維持されていることを願います。
※アパルトヘイト時代の地名を見直す動きの一環としてPietersburgはPolokwaneに、EllisrasはLephalaleに2022年に正式に改名されています。
E.tortirama の野生株について
E.tortirama は、その魅力的な特徴から、コレクターの需要が高く、かなり以前から乱獲されている種のひとつです。現在は保護植物に指定されていますが、密猟された可能性が極めて高いベアルート苗が、今もオークションサイトに出品されています。
E.tortirama は種子からでも、立派に育ちます。苗の流通はそれなりにありますし、1本あれば自家受粉での結実も可能ですから、現在では野生株を採取する必要性は全くない気はしますが…。
強いて違いを言うのであれば、実生苗は地下に埋まった主茎部が分岐しやすく、野生株は主茎の分岐がほとんどない点です。ただ、この違いを栽培方法で埋めたり、分岐した(させた)主茎部をいかにして魅せるのかが愛好家としての腕の見せどころです。
山木が所有欲を満たすための道具にならないことを切に願います。
栽培について
E.tortirama は肥大した主茎部に水分を多く蓄えることが可能です。E.tortirama に限らずE.groenewaldii(現在はトルチラマのシノニムとなっています)、E.clavigera 等は、鉢内の長時間の過湿を苦手とします。これらの種は、気温が下がる晩秋以降は、根から水の吸収が大幅に低下するため、この時期の潅水には特に注意が必要です。吸い上げきれない水分が鉢内に残り、過湿が続くことで根腐れにつながってしまいます。主茎部が埋まっているため、気がついた頃には手遅れになりやすいです。
この種に限ったことではありませんが、「迷ったら水やりをしない」ことが大切です。
E.tortirama は、樹木や低木の間の平地に自生していることが多い種です。そういった木々に守られながら生育していることが多いのかもしれません。実際に4月〜10月初旬ごろまでは30%程度遮光した環境の方が、機嫌良く生育します。

同じFNでも枝の出し方には個性がある。
余談ですが、原産地のNorthern Provinces(ノーザン・プロヴィンシズ)がどこを指すのかが、よく分からず、この際ですから調べてみました。
Northern Provincesは、かつての行政区画の総称で、旧トランスヴァール州の北部地域を指すそうです。現在のリンポポ州とムプマランガ州の一部に相当する場所になります。
他にも、記事を書いているとPietersburgがPolokwaneに改名されたように、多くの地名が改名されていることに気がつきます。これは植民地時代やアパルトヘイト時代の名残が多く残っているため、アイデンティティの再構築と歴史の見直しの一環として、南アフリカでは地名の改名が頻繁に行われているそうです。
もしやと、Port Elizabethを調べたら、こちらも2021年にGqeberhaに正式に改名されていました。ただし、対外的には従来の地名も併用しているようです。
参考文献
White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.770-773.
S.P. Fourie.(1984).Euphorbia Journal Vol.Ⅱ.pp.75-80.
S.P. Fourie.(1988).Euphorbia Journal Vol.Ⅴ.pp.83-88.
Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.828-832.
Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia tortirama R.A.Dyer. Plants of the World Online. Retrieved February 20, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:348532-1
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