Euphorbia fruticosa / ユーフォルビア・フルチコーサ

Euphorbia fruticosa Forssk.
原産地:サウジアラビア、イエメン

アラビア半島南西部の乾燥地帯に自生するユーフォルビアです。
フィンランド出身の博物学者であるPeter Forsskålによって命名されています。
種名のfruticosaは、ラテン語に由来する形容詞で「低木状の」「枝分かれした茂みの」といった意味があります。

Euphorbia fruticosa PH219
Wadi Al-Hadud,S/W of Mankhah, Yemen
Euphorbia fruticosa AJB126
South of Nashamak, Yemen
この個体は一般的なEuph.fruticosaとは異なるタイプ

フォルスカールによって執筆され、彼の死後ニーブールによって1775年に出版されたFlora Aegyptiaco-Arabicaでは、Euph.fruticosa について、以下の様に説明されています。

”枝分かれする低木で、枝は円柱形で無毛、小さな葉を持ち、花は杯状花序(cyathia)に配置される”

Flora Aegyptiaco-Arabica

自生地と形態

乾燥した落葉低木林の急斜面や岩の割れ目、礫混じりの土壌など水はけの良い環境に自生しています。
Euph.fruticosa の形態は多様性に富み、捉えどころが非常に難しい種のように思います。
標高や土壌特性などの環境要因が、Euph.fruticosa の形態に影響を与えているのかもしれません。
国内での流通も少ないながらにあり、斑入り種やイネルミス(刺無し)タイプなどもみられます。

Euphorbia fruticosa FN755
20km N of Ma’bar, Yemen

栽培について

栽培は容易です。乾燥への耐性も高く、冬季、断水気味に管理してもへこたれることはありません。
耐寒性は5度近くを維持出来れば、概ね問題はありません(おそらく、霜に当てなければ0度程度でも耐えるように思います)。
脇から次々と枝を出していくため、カキコでの繁殖が容易です。
自家受粉も難しくないのですが、栄養繁殖での繁殖が遥かに簡単なためか、実生苗が流通することは基本的にありません。

Peter Forsskål

Peter Forsskål
フォルスカールの死後、1775年にニーブールによって出版された
Flora Aegyptiaco-Arabica

フィンランド出身(当時はスウェーデン王国の一部)の博物学者、植物学者。近代分類学の父とも言われる、カール・フォン・リンネの弟子の1人。
デンマーク王フレデリク5世の命により企画された国家プロジェクト「アラビア探検(The Royal Danish Arabia Expedition 1761-1767)」に参加したメンバーの1人です。
当時のヨーロッパでは、アラビア半島はほとんど未踏の地でしたが、古代から南アラビア(現イエメン)は豊かな香料と神秘の地「幸福のアラビア」として知られていたことが、この国家プロジェクトの背景にあったようです。
フォルスカールは1年ほどの現地調査で1800種程の植物を採集(多くが新種)した他、多数の昆虫、魚類、哺乳類も記録しています。そのうちの1つが今回取り上げたEuph.fruticosa です。
この探検の道中、マラリアが蔓延し、1763年にフォルスカールは31歳という若さで死去しています。
この探検で帰国出来たのは、ニーブール(数学者、地理学者、探検家)のみであったということから、この探検がいかに困難なものであったか想像に難くありません。
フォルスカールは若くして亡くなりましたが、その短い生涯の中で植物学、動物学において大きな功績を残しています。

参考文献

Forsskål, Peter. (1775).Flora Aegyptiaco-Arabica. p.94.
Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia fruticosa Forssk. Plants of the World Online. Retrieved May,9, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:346570-1

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