Euphorbia decepta subsp. gamkensis (Marx) Bruyns
原産地:ケープ州
ガムケンシスとして馴染み深いタコものユーフォルビアのひとつですが、現在はデセプタに統合すべきとの意見が多く、POWOではデセプタの亜種として扱われています。
GM225のフィールドナンバーがついているものは、本種のタイプロカリティで、South Africa,Cape,≤10km SE of Calitzdorp along Gamka-east road,‡400m(南アフリカ、ケープ州、カリッツドープ南東10km以内、ガムカイースト道路沿い、標高400m)にてMarx氏により、採集されたものです。
gamkensisという亜種名はGamka周辺に生息していることを意味しています。ラテン語の -ensisは(〜地方の、〜産の)を意味するラテン語となります。
種名のdeceptaは、deceptus(欺く、紛らわしい)というラテン語に由来しており、おそらく本種と見た目の似たユーフォルビアが多く、識別が難しいことを示しているのではないでしょうか。
E. deceptaと似通ったタコものユーフォルビアは確かに多く、以下の種も現在ではE.deceptaに統合されています。
・E.albertensis
・E.suppressa
・E.brevirama
・E.astrophora
・E.brevirama var. supraterra
分布
クラインカルーのCalitzdorp(カリッツドープ)からOudtshoorn(オウツフルン)にかけての狭い範囲に分布しています。自生地では非常に珍しいユーフォルビアのひとつのようです。
昼夜の寒暖差が大きい地域で、特に冬季は朝晩の気温差が大きいようです。グレートカルーの個体群(基亜種のE.decepta)とはSwartberg 山脈によって隔離されています。
カリッツドープはポートワインの生産地として、オウツフルンはオーストリッチ産業で「世界のダチョウの首都」とされるほど有名な町です。これらの産業での開発によって生息地が脅かされているとも言われています。生息地が狭いユーフォルビアですから、こうした影響を特に受けやすい種です。
※クラインカルーはリトルカルーと同義です。Kleinはアフリカーンス語で「小さい」という意味。

形態
成熟した個体の茎は太さ50-90mm(150mm)、枝は放射状に上向きに伸び、長さ15-60mm(80mm)、太さ4-10mm。枯れた花柄を残すこともあるが、次第に摩耗していきます。
E.deceptaとの違いは明確ではなく、花の形態が僅かに違う程度とされています。
分かりやすい違いとしては花柱の形態で、subsp.gamkensisは花柱の中央付近まで裂け、長さ2mm程度であることに対し、subsp.deceptaは基部の合着部が長く、先端の裂け方が浅いという点です。
腺体の縁にはごく浅い刻みがあります。腺体にみられる歯状突起はsubsp.gamkensisでは私は見たことがありませんが、ごく小さな歯状突起がみられることもあるようです。
私感ですが、subsp.gamkensisは全体的にサイズが小さいことや、成長しても球体を保ちやすいようのに対し、subsp.deceptaは成長に伴い円筒形に育っていくことが多いように思います。
また、蒴果もsubsp.gamkensisは有毛ですが、subsp.deceptaは無毛という点も異なるように思います。

写真では分かりにくいが、蒴果にはまばらに毛が生える。
栽培
難物の多いタコものユーフォルビアの中でも、栽培の癖が少なく、栽培しやすい種のひとつです。
栽培下での花付きもよく、繁殖もさせやすい種のひとつでしょう。国内では5〜6月頃に開花し始めることが多いように思います。また断水後の潅水でも、開花が誘発されることがあります。
耐寒性は比較的に高く、最低気温5℃以上あれば、まず問題ありません。
霜にさえ当てなければ、0℃でも耐えるはずです(健康な株であることが絶対条件です)。
ただし、耐寒性については管理方法や管理場所によってもかなり違いますので、株の状態を見ながら管理してください。
他のタコものと比較すると、枝が短い種(15-60mm)です。潅水頻度が多かったり、日照が不足すると枝が徒長するように長く伸びてきますので、この枝の長さが、管理の目安となります。
球体に多くの水分を溜め込める種ですので、乾湿のメリハリをしっかりとつけてあげましょう。
また、風通し良く、空気を停滞させないようにする工夫も重要です。

Calitzdorp,RSA

枝の長さが管理のひとつの目安となる。
参考文献
Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.297-299.
Alma Möller & Rolf Becker.(2019).Field Guide to the Succulent Euphorbias of southern Africa.pp.150-151.
White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.431-432.
Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia decepta subsp.gamkensis(Marx)Bruyns.Plants of the World Online. Retrieved March 30, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:77305711-1
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