Euphorbia globosa (Haworth) Sims
原産地:東ケープ州(南アフリカ共和国)

buggsbalmer licensed under CC-BY 4.0,via iNaturalist
Euphorbia globosa は1821年にイングランドへ持ち込まれたのが最初と考えられており、その後すぐに人気を博し、広く栽培されるようになりました。200年以上も前から人気が続く、歴史の長い植物です。
1823年にHaworth によってDactylanthes globosa として記載されましたが、すぐにSims によってEuphorbia 属へ移され、Euphorbia globosa として記載されています。
Sims はE.globosa について、Roundish-jointed Spurge(球節性ユーフォルビア)と特徴をよく捉え、説明しています。
globosa という種小名は、ラテン語のglobosus(球状の、丸い)に由来しています。
※Dactylanthesはギリシャ語由来で、dactyl(指)+anthes(花)となり、指状の花を指しています。
※globosa はglobosus の女性形です。
形態
草丈2-10cm、直径5-30cmの密なマット状に広がり、多くの密な枝を有します。主茎は、地表レベルで球形の枝が連続的につくられるにつれて、徐々に地下へと引き込まれていきます。
特徴的な指状の花で、両性花です。
花柄の長さは非常に短いものから、20cm超の長いものまで変異に富んでいます。これらの花柄には単独で咲くこともあれば、不規則に分岐し複数の花をつけて集散花序を形成することもあります。こうした多様な開花形態は、ひとつの株で同時に観察することも多く、「不規則」としか言いようがありません。

花柄の長さは同じ個体でも統一感はなく、ランダム
分布と生息地
本種の分布は東ケープ州に限定されており、Port Elizabeth周辺から、北はAddoまでの範囲にしか見られません。標高1000mまでの乾燥地で、自生地は常にインド洋の海岸線から20Km以内に位置しています。
生息環境は沖積礫(ちゅうせきれき)や小石のある平地、ゆるやかな丘陵地に自生し、密な低木の間にあるやや開けた場所に見られることが多いようです。若い個体は、草や低木の影に守られるように生息しています。
自生地ではゴルゴニス、ポリゴナ、ステラータ等のユーファルビアやアロエ、ハオルチア、メセン類等と共に生息しているようです。
※沖積礫:川や水流が運んできた丸い石(礫)が、低地や扇状地などに堆積してできた地層の一部。水はけがよく乾燥しやすい場所

garethcoombs licensed under CC-BY 4.0,via iNaturalist
自生地の現状
1941年に刊行されたThe Succulent Euphorbieae (Southern Africa)では、以下の様な記述があります。
「Port Elizabeth からUitenhage 間で豊富に見られ、通行人が踏まずにはいられないほどである。」
残念ながら、現在ではこうした光景を見ることは叶わなくなっています。E.globosaは過去60年間で90%以上という著しい個体数の減少がありました。
Port Elizabeth近郊の沿岸地域の開発によって生息地が喪失し、個体群が分断された他、都市化の進行、人為的汚染、人や家畜による踏みつけが、この種の脆弱性をさらに悪化させています。しかし、この種の最大の脅威は、違法採集だと言われています。
2019年に南アフリカの大手輸出元であったナーセリーが摘発され、13,000本以上の違法採集されたE.globosaが発見されたこともありました。
2019年の調査では、残存する個体数は2,500株未満と推定されています。
本種の生存は極めて不安定な状態であり、レッドリストでは近絶滅種(Criticalaly Endangered:CR)に分類されています。
栽培下では一般的にみられる植物で栽培、繁殖は容易ですが、野生株の様な丸く詰まった株を再現することが難しいことから、違法採集が後を絶たない現状があります。栽培技術の確立は急務でしょう。
栽培
沖積礫地に生息する種であることや、その丸い形態からも乾燥に非常に強い植物であることは想像に難くありません。実際に、乾燥には非常に強い植物です。
多肉植物全般に言えることですが、水はけ良く管理し、乾湿のメリハリをつけることが重要です。
日照の強さや日照時間は重要で、これらの条件が悪化すると、途端に枝が徒長してきます。
LEDでの強光管理では、枝は野生株の様な丸みを帯びてきます。ただし、LEDは必須ではなく、ハウスや屋外管理でも十分に丸い枝をつくることは可能です。そのためには試行錯誤と栽培技術は必須です。

枝を丸くつくるのは難しいが、挑戦しがいのある植物

繁殖は容易です。潅水によって開花が誘発されるようで、長い期間開花しています。また、自家受粉も可能です。
挿木による繁殖も、属中最も簡単な部類だと思います。冬場に徒長してしまった枝を落とし、挿木するのもよいでしょう。
ただし、挿木では実生株の様な太い主根は通常形成されません。本種の実生をする意義はここにあるように思います。ただ、これも面白いことに実生であっても太い主根をつくらず、細い根しか出さない個体もあり、本当に不規則な種であると認識させられます。そうした点も含めて本種の魅力なのだろうと思っています。
グロボーサは栽培の試行錯誤が非常に面白いユーフォルビアです。自生地の様な株姿を再現するためには、知識、観察、栽培のどれも欠かすことが出来ません。腕試しとして栽培するのも面白いのではないでしょうか。
分類学的余談
E.globosaは分類学的には、Euphorbia属 Athymalus(アティマルス)亜属 Anthacanthae(アンタカンターエ)節 Dactylanthes(ダクティランテス)亜節に分類されています。
この中にはE.patula(E.tridentata、E.ornithopus、E.leachiiもここに含まれる)やE.polycephalaの様に花の構造や形態が近く、直感的に近縁であることが推察できる植物も含まれていますが、驚くべき事にE.trichadeniaもDactylanthes亜節に分類されています。 E.tuberculataの様な花を咲かせ、地下に大きな塊根を持つので、一見すると遠縁のように思えますが、DNAの分子解析の結果ですから間違いないのでしょう。

まさに指状の花

E.globosaと同じDactylanthes亜節に分類されている。
こちらも指状の花であり、近縁であることは想像に難くない。
参考文献
Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.64-68.
White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.495-590.
Detlef H. Schnabel.(2024).Euphorbia World Vol.19-No.2.pp.13-22.
Rikus van Veldhuisen.(2015).Euphorbia World Vol.11-No.1.pp.5-10.
Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia globosa(Haw.)Sims.Plants of the World Online. Retrieved April 15, 2025, from ….
コメント