Euphorbia meloformis Aiton
原産国:ケープ州(東ケープ州)
日本でも馴染み深いユーフォルビアで、貴青玉という和名が与えられています。ちなみにE.valida には万代という、永遠を意味する和名があります(耳にしたことはありませんが…)。
meloformis という学名はメロンの様な形をしていることに由来します。
詳細は後述しますが、現在はバリダとして馴染み深い、亜種のE.meloformis subsp. valida はE.meloformis に統合されています。
分布と生息地
生息域は東ケープ州のウォーターフォード(Waterford)、ウイテンハーヘ(Uitenhage)、ポートエリザベス(Port Elizabeth)、ペディ(Peddie)東部までですが、一般的に見られるのはグレアムズタウン周辺です。
ウイテンハーヘからポートエリザベスまでのエリアでは、新たな工業地帯や住宅地の造成などにより深刻な個体数の減少があったようです。このエリアでは、さらなる開発計画もあり、個体数の減少が懸念されています。また、ペディ近郊でも過放牧による生息地の劣化が進行しているとされています。
E.meloformis は砂利質の平地や、緩やかな斜面の石の間や低木の間のような環境に生息しており、多くの場合、下の写真の様に小型の多肉植物や草と共に育っています( iNaturalist で自生地の生育環境を覗いてみると栽培のヒントになるはずです )。
成熟した株は開けた場所でもみられますが、小苗の多くは、低木や草の陰に守られるようにして生育しています。過放牧による踏みつけは、こういった低木や草が被害を受けやすく、その結果、小苗の生育環境が厳しくなり、個体数減につながっているようです。

E.meloformis とE.valida
本種の特徴のひとつは、発達した花柄です。花後も花柄が残り、乾燥し木質化することで、独特の株姿をつくりあげます。この特徴は乾燥した地域でより顕著にみられ、ポートエリザベス沿岸部などの湿潤な地域では花柄は脱落しやすいとされています。
E.meloformis とE.valida の違いは、一般的には花柄が脱落する(しやすい)かしないかで区別されているように思います。
Dyer 博士は、E.meloformis の方が①小型であること②頂部が窪んでいること③強く発達した直根を持つ、といった3 点で区別が可能であるとしています。
Marx氏はE.valida の方が①より大型で②頑丈で持続する花柄③頂部の窪みが浅いこと④根は深く張らず地表近くに広がっていると、E.meloformis との違いについて述べています。
ただし、E.meloformisでも生息地によっては太い直根を発達させない場合もあったようで、判別にやや困難を抱えているようにもみえます。それでも、頂部の窪みは幼苗の段階から顕著で、違いは明らかであるとしています。
また、E.meloformis でも沿岸型(ポートエリザベス、ウイテンハーヘ地区)と内陸型(グレアムズタウン)があり、両者は明確な違いがあるとしています。典型的なタイプは沿岸型で、花柄が完全に脱落する、いわゆるメロフォルミスらしいタイプのようです。

頂部の窪みは浅いが、明確に区別出来るかどうかは…

グレアムズタウンに由来をもつ個体。いわゆる内陸型。

Port Elizabeth, RSA いわゆる沿岸型
Bruyns氏は、E.meloformis は生育環境によって非常に変異しやすく、両者の中間型も多くみられることから、単一の種として扱うほうが理にかなっているとのことでE.valida をE.meloformis のシノニムとしています。
そもそも形態変異が大きい種であり、さらに生息環境によっても形態が異なるため、色々なタイプがあると考えると、シノニムとして扱われることにも納得がいきます。

内陸型といわれるタイプ。花柄は持続し残る。直根も確かに太かったが….
最も長く、太い花柄はサマセット・イースト南部の個体でみられるようで、日本で人気の高いスーパーバリダは、この地域に由来を持つものかもしれません。

lucstrydom licensed under CC-BY 4.0,via iNaturalist
ポートエリザベス近郊で撮影されたもの、目立った花柄はみられない
栽培について
栽培については、特に言うことが見当たらないほど容易です。入門種としても最適のように思います。強いて言うならば、玉型のユーフォルビアですので水は控えめくらいで十分です。また、玉型のタイプ全般に言えますが、光量が不足し徒長させてしまうと、観賞価値を大きく損ないますのでご注意を。
軒下で強い霜に当たらないような場所であれば、水を切り休眠させることで、屋外越冬も可能です。
育種交配も面白く、初心者〜玄人まで全ての人が楽しめる種です。

国内で交配されてきたバリダ。子吹きしやすいタイプ。
花柄は強く、脱落はほとんどしない。
参考文献:
White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.565-578.
Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.135-140.
Gerhard Marx.(1988).Euphorbia Journal Vol.Ⅴ.pp.94-103.
Gerhard Marx.(1992).Euphorbia Journal Vol.Ⅷ.pp.82-83.
Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia meloformis Aiton. Plants of the World Online. Retrieved February 12, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:347319-1
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