Euphorbia multiceps subsp.multiceps

Euphorbia multiceps A.Berger
原産地:ケープ州


種小名は”multi-“(複数の、多くの)、”ceps”(頭、頂点)で、多数の頭部を持つといった意味で、E.multiceps の特徴をよく表しています。

E.multiceps の特徴

  • 円錐形の成長形態(植物界全体でも珍しい)
  • 不稔の花柄(結実しなかった花柄)が硬化し、鋭い棘となる
  • 杯状花序が植物の側面全体に形成される

E.multiceps には、上記の様な特徴があり、他種と混同されてしまう可能性は低いでしょう。

Euphorbia multiceps GM437
珍しい円錐形の成長形態

分布

iNaturalistで分布を確認すると、南はカリッツドープとレディスミスの中間地点、北はスプリングボック近郊まで、南アフリカの冬季降雨地帯に広く分布していることがわかります。
分布が広範であり、自生地による変異も大きいようです。その中には、高さ1mに達するような巨大個体群もあるようです。
石が多い平坦な地に自生し、低木がまばらに自生した環境で多くみられ、若い苗は低木の陰に守られるように生育しています。

Euphorbia multiceps by ashmann licensed under  CC-BY 4.0,via iNaturalist

栽培について

E.multiceps は栽培困難種として知られており、長期間生存させることが非常に難しいと言われています。Rikus氏は、その原因をE.multiceps の不規則な成長リズムにあると考えているようです。
冬季降雨地帯に生息しているものの、完全な冬型種ではなく、主たる成長期は秋としています。

日本の気候では、10~11月以降に動き出し、2月頃開花に至ります。ただし、栽培下では花が咲きにくく、繁殖には根気が必要です。

潅水について、夏場は断水気味に管理した方が安全ですが、植物体の温度を下げるために葉水・幹水は有効です(必ず夕方に)。
本種は強い光を好みますが、夏の蒸し暑さに弱いことが栽培を困難にさせています。そのため、夏季は植物体の温度を下げる工夫が必要になります。
ユーフォルビア全般、栽培には”光と風”が重要な要素ですが、E.multiceps は、まさに、この”ユーフォルビア栽培の基本”を徹底することが大切です。ここでいう”風”は扇風機やサーキュレーターで直接風を当てることではなく、空気を停滞させず、常に動かすという意味です。もちろん扇風機等で直接風を送り、植物体を冷やす工夫も有効です。

生育適温は15〜20℃前後だと推測しています。耐寒性は比較的に高く、関東以南であれば、無加温のハウス(内張りをして)でも越冬可能なように思いますが、安全を考えれば2〜3℃程度までです。

屋内LED栽培は光熱費こそかさみますが、温度や光量をコントロールしやすく、モンソニアの多くの種の栽培を容易にしたように、本種の栽培を容易にするかもしれません。

Euphorbia multiceps GM437
花さえ咲けば、結実は容易。率は悪いが自家受粉も可能。
Euphorbia multiceps GM437

参考文献
 Rikus van Veldhuisen. (2008). Euphorbia World Vol.4-No.2. pp.20-26.
 Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.368-376.
 White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.459-467.
 Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia multiceps A.Berger. Plants of the World Online. Retrieved March 28, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:347417-1

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