Euphorbia piscidermis / ユーフォルビア・ピスキデルミス

Euphorbia piscidermis は、1974年に M. G. Gilbert によって記載されたユーフォルビアです。

種小名 piscidermis は、ラテン語の piscis(魚)と dermis(皮膚)を組み合わせたもので、その名の通り、本種の外見的特徴を端的に表しています。

形態的特徴

本種は基本的に単幹で、若い個体では球形、成長に伴い円筒形へと変化します。

ごく小型のユーフォルビアとして知られていますが、最大で高さ約12cm、直径7cm程度に達するとされており、一般的なイメージよりも大きく成長するようです。

ピスキデルミス最大の特徴は、茎表面を覆う白〜灰色の鱗状の突起にあります。

これは葉痕が変化した結節が平坦な鱗片状となり、螺旋状に重なり合ったものです。このような構造はユーフォルビア属の中でも本種のみに見られる、極めて特異な形質であり、他種と混同されることはほとんどありません。

この鱗状構造は、強烈な直射日光を反射して茎本体の温度上昇を抑える役割を担っていると考えられています。また、砂や小石に擬態することで草食動物の目を欺き、食害を回避する効果があるとも言われています。

鱗状構造が特徴的

分布と自生地

ピスキデルミスは、エチオピア東部のオガデン地方からソマリアにかけての、非常に限定された地域のみに自生しています。

タイプ標本は、Kelafo の北およそ10kmに位置する丘で採集されました。Google Maps の航空写真を見ると、赤褐色の土壌と白い石灰岩が露出した大地が広がっており、点在する黒い影はアカシアなどの低木と考えられます。こうした低木の影や岩の隙間に、ひっそりと生息しているのでしょう。

Kelafoから北へおよそ10kmの地点の航空写真。自生地の過酷な環境が伺える。

栽培について

本種は難物として知られ、多くの場合は接木によって維持されています。

成長は極めて遅く、目に見える変化はほとんど感じられません。また、根の再生力が弱い点も特徴で、頻繁な植え替えには向きません。可能な限り上質な培養土を用い、植え替え回数を抑えることが重要です。

自生地が石灰岩質土壌に限定されていることから、アルカリ性でカルシウム分の豊富な環境を好む可能性があります。通常の培養土でも育成は可能ですが、カキ殻を混ぜ込んだり、リキダスを使用するのも一案でしょう。

自生地では冬季でも平均最低気温が12℃を下回ることはほとんどなく、耐寒性は高くありません。栽培下では最低気温8℃程度を安全ラインと考えるのが無難です。

また、ピスキデルミスは栽培環境下で、二又分枝(ふたまたぶんし)や帯化(たいか)といった成長異常を起こしやすいことが指摘されています。小型でありながら、形態的変異に富む点も本種の興味深い側面です。

二又分枝した個体
帯化した個体

本種が記載され、鮮烈なデビューを飾った直後、自生地オガデン地方を舞台に「オガデン戦争」と呼ばれる大規模な紛争が勃発しました。その影響で、発見直後から約30年にわたり、誰も現地調査を行えない空白の時代が生まれます。

2000年代以降、地域の治安が比較的安定したことで、ようやく専門家やプラントハンターが再訪できるようになり、ピスキデルミスも再び姿を現すことになりました。

空白の30年間は非常に希少であり、マニア垂涎の種であったようです。現在では接木された株や自根の株が流通するようになっていますが、それでも流通量は多くありません。特に自根株は発根の難易度が高く、流通量は限られています。

自家受粉可能で、実生繁殖もできますが成長が極めて遅く、実生苗が流通することはほとんどありません。チャレンジングな種ですが、場所を取ることもありませんので、繁殖に挑戦してみるのも面白いでしょう。


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