Euphorbia tulearensis (Rauh) Rauh
原産地:マダガスカル
マダガスカル産ユーフォルビアの中でも、最も美しい種のひとつとされるユーフォルビア・トゥレアレンシスです。
その種小名はタイプ産地であるTuléar(現Toliara)に由来しています。

本種はToliara周辺の石灰岩台地「La Table」と呼ばれるテーブル状の地形に自生し、その分布はきわめて限られています。
成長は極めて遅いものの、栽培は容易で癖のない種です。入門種の次のステップアップとしても最適なように思います。
冬季に断水すれば、5℃程度の低温にも耐えるとされています。
開花期間も長く、種子を得るのも難しくありません。ただし、種子は非常に小さく、紛失しやすいため取り扱いには注意が必要です。
結実後にネットをかけたり、セロハンテープで種子の飛散を防止する方法が一般的ですが、私はよく観察し飛散前に手で摘み取るようにしています。初めこそ種子が四方八方に飛散してしまいますが、慣れればこうしたミスもほとんどなくなります。


自生地は石灰岩や露岩の多い台地で、こうした地形が断崖や割れ目、浅い土壌といった環境をつくります。
石灰岩の割れ目が独特の微気候を生み、その環境に特化して適応した結果、きわめて高い固有性と狭い分布域を持つようになったと考えられます。
トゥレアレンシスが石灰岩質の低木地帯に生息していることを考慮すると、高カルシウム、乾燥、アルカリ性、浅い土壌という特殊な環境にあることが推測できます。その点を念頭に置くと、やはり水はけがよい用土が適していると言えるでしょう。用土はアルカリ性である必要はなく、通常の多肉植物用の培養土で十分です。

自生環境によって様々なタイプがあるよう。
トゥレアレンシスはCITES附属書I類として扱われ、商業目的の国際取引は原則禁止とされています。
かつては流通しているものの9割が違法採取されたものと言われていた時期もありましたが、幸いにも現在では人工繁殖されたものが多く流通するようになっています。
それでも国内では野生株と思しきものが大量に流通しており、違法採取されたものと知らずに手にとってしまう方が多いのもまた事実です。
CITES附属書I類という区分は、植物ではあまり馴染みがないかもしれませんが、動物ではジャイアントパンダやゴリラなどが該当します。
それらと同等の保護対象が、インターネットオークションやショップで普通に売られている現状は、やはり異常といえるでしょう。
本種の魅力的な草姿から、こうしたことを知らずに手にとってしまった方も多いでしょう(私もその一人です)。
いまだに現地球が流通する理由は、本種の成長の遅さに要因があるようです。
おそらくマダガスカルユーフォの中で最も成長が遅いのが本種です。国内では実生10年でも足らず、現地球の迫力に到達するのには20年ほど要するのではないかと思います。
しかし、この「成長の遅さ」はデメリットではなく、本種の素晴らしい魅力のひとつです。
じっくりと付き合うことが出来ますし、手に負えなくなるサイズになってしまうこともないでしょう。
栽培スペースが限られる方にもおすすめできる、扱いやすく奥深いユーフォルビアのひとつです。


周囲の幼苗はEuph.gymnocalycioides
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