Euphorbia obesa subsp. obesa / ユーフォルビア・オベサ

Euphorbia obesa Hook.f.
原産地:ケープ州

国内で最も人気のある多肉植物のひとつとして数えられる、ユーフォルビア界きっての人気種がユーフォルビア・オベサです。その人気はオベサ専門店や、オベサのみを栽培する愛好家もいるほどです。
種小名はラテン語のobesus (肥満の、ふくよかな)に由来しており、本種の球形でずんぐりとした形態から名付けられています。

東ケープ州のKendrew付近の標高300〜900mの地点に分布しており、平地では低木の下、丘陵地では石の多い土壌に生息しています。特に若い個体は、低木や草、石の下で守られるように生息しています。

形態

雌雄異株、棘のない小型種。直立した単一の膨らんだ茎からなり、若い個体では半球状ですが、成長につれて次第に円柱状となります。高さ20cm、直径10cm(直径25cmの個体も報告されている)まで。通常は7〜10稜で、小突起(結節)があります。表面は滑らかで、灰緑色〜褐色、紫色の水平帯がみられます。
花序は茎の頂部付近に多くみられ、小突起の腋には単独の花柄が生じます。また花柄上に複数のサイアチア(雄花は1〜5個、雌花は1〜3個)が生じることがあります。花は通常無臭ですが、時折、僅かにフルーティな芳香を放つそうです(何度かチャレンジしましたが、私には感じとれず)。

Euphorbia obesa by andrew_hankey licensed under  CC-BY 4.0,via iNaturalist

subsp.obesa とsubsp. symmetricaについて

1939年にR.A.DyerがKendrewから100km以上離れたWillowmoreでEuph. obesaに類似した植物を発見しており、新種 Euph. symmetricaとして記載しています。その後の1998年にGordon Rowleyが差異が小さいとしてEuph. obesa subsp.symmetricaとして分類を変更しています。

obesaとsymmetricaは非常に似ており、その違いについては国内外問わず、かなりの混乱がみられますが、主な違いは以下の点です。

1.subsp. symmetrica成熟個体では、各小突起の腋から3-5本の花柄が生じるのに対して、subsp. obesaでは通常1本のみである。
2.subsp. obesaでは、各花柄上に複数のサイアチアが発達することがあるが、subsp. symmetricaでは、各花柄上に単独のサイアチアがつく。


その他にsubsp. symmetricaは扁平で稜線が丸みを帯び尖らない、牛蒡状の直根が発達する点で判別可能とされることもあります。ただし、球の形状や稜線、根の形状については、現在ではsubsp. symmetricaにも様々な形態があることが知られており、この点での判別は困難でしょう。

その他に、実生のごく若い苗では、subsp. symmetricaはライムグリーンを呈するとする意見もあります。これについてはsubsp. obesaではこういった苗の出現は基本的にありませんので、参考になるかもしれません。

注意点としては、両亜種は混乱があり、長年混同された可能性がある(高い)こと、容易に交雑することから、それらが交雑種である可能性も否定できません。確実に信頼出来る入手先+産地情報が付いていることが判別の大前提となります。

KendrewとWillowmoreの地域間に自然交配種が存在するといった話も聞きましたが、私が調べうる限りでは、こうした情報や記録は見つかりませんでした。
これだけ似通った種ですが、現在でもオベサの亜種とされているのは、分類学的な違いを認め、両種に自然交雑が起こらない程度の地理的隔絶があるためでしょう。

Euphorbia obesa subsp.symmetrica by audissou licensed under  CC-BY 4.0,via iNaturalist

野生株について

Euphorbia obesaは長らく非常に珍しい植物だったようで、その珍しさゆえに高値で取引され、その結果、自生地から乱獲されるようになり、1931年には既に南アフリカ政府によって、生きた個体の輸出禁止措置がこうじられています。発見以来、驚くべき数のオベサが抜かれたとされていますが、次第に栽培方法が確立し、そうした圧力が減少していったようです。

近年の調査では成熟個体数500株未満とされていますが、Kendrew近郊には若い個体が多くみられるようです。

繁殖容易で流通も多く、野生株の必要はありませんが、2024年に国内でも野生株としてインターネットオークションに流通したことがあります。この原因は、国内の野生株を求める愛好家の多さゆえでしょう。

栽培について

自生地の年間降水量は200-300mm程度。
夏は平均最高気温が26℃前後、冬季は氷点下を記録することもあるようです。しっかりと根を張った苗であれば耐寒性も高く、我が家では軒下で氷点下を何度も耐えて越冬したことがあります。都内であれば、工夫次第でベランダでの越冬も可能でしょう。軽い霜にも耐えますが、無論、霜にはあてないほうが安全です。

用土は有機質が多いと、根腐れを起こしやすいため、赤玉や軽石、鹿沼土を主体とした用土が管理は楽なように思います。

GW前から30%程度の遮光ネットをかけ、日焼けと夏場の高温障害を防ぎましょう。暗すぎる環境は、徒長により、その特徴的な形状を損ないリカバリーが困難ですので注意が必要です。
根は繊維状で細く、栽培は、案外と繊細なところがあります。

参考文献

 Daphne & Albert Pritchard.(2008).Euphorbia World.vol.4-3.pp.20-23
 Peter V. Bruyns.(2022).Euphorbia in Souuthern Africa.pp.140-147.
 White, A., Dyer, R.A., & Sloane, B.L. (1941). The Succulent Euphorbieae (Southern Africa). pp.549-564.
 Royal Botanic Gardens, Kew. (n.d.). Euphorbia obesa Hook.f. Plants of the World Online. Retrieved March 28, 2025, from https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:347540-1
 日本多肉植物の会.(2022).香象承伝07「Euphorbia symmetrica 02」.from https://j-succulent.jp/blog/story/3199/

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